男前にプロポーズ……なはず

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男前にプロポーズ……なはず

悪魔の世界の誘拐事件は主犯の銀珠が拘束され、銀珠に誘発された仲間も全て捕まった事で幕を閉じた。彼等の目的は、魔王とその仲間を森へ誘き寄せて張り巡らした呪縛で混乱させ、全滅させる事。魔王だけを残し、本来の悪魔の姿を取り戻す事だと言っていた。 けれど王牙は言う。銀珠の言う、本来の悪魔の姿とは元々人間が勝手に植え付けた概念でしかないって。悪魔も人間も竜人も、見た目や力や立場は違うけど、変わらないんだって。 人の魂を食べるから、力を使って違う次元に世界を作って見つからないように生きてはいるけど、街には逆に、偽の角を付けた人間もいるんだよ、なんて王牙は笑っていた。 城に帰って来た時、沢山の悪魔の人々が出迎えてくれて、王牙がこの世界の王様なんだって改めて実感した。"凄いでしょ~惚れ直した?アタル~"なんて言葉がなければだ。それがあって安心したってのもあるけど。 「……光風様」 銀珠達に攻め入られた光風の部屋はボロボロだった。王牙と俺、黄金さんで中に入り、漆史が外で待機している。 蓋の開いた棺桶の中にはもう誰もいなかった。消えてしまったんだと解った。散った星屑のようなものが床に散乱している。どこか寂しげに感じて、王牙の手を繋いだ。 「すみません……、私が至らないばかりに」 「黄金さん」 棺桶の前で涙を流す黄金さんに話しかける。振り向いた彼に目を伏せて笑いかけた。 「俺の中に、光風がいたのが解る。今はもう俺は俺でしかないけど、きっと光風は、ここまで守って大切にしてくれた黄金さんにありがとうと言っていると思う。だからね、泣いたりしないで。俺は今凄く幸せだよ。黄金さんも幸せにならなきゃ」 「アタル様……こちらこそ、ありがとうございました…光風様がいなかったら、私は漆史と出会ってもいなかった、守り抜きたいという気持ちも愛も、楽しみでさえ解らなかったでしょう。魔王様と会わせてくれたのも、全て、伝えきれない感謝で一杯です」 散らかった部屋を綺麗にしたいと笑う黄金さんを後は漆史に任せて、王牙と共に城の中を歩く。来た時はあんなにも暗くて恐ろしいと思った城が、今や愛しいぐらいだ。 「大丈夫かな、黄金さん」 「平気だよ、アタルに俺がいるように、黄金には漆史がいるからね、後は二人の問題かな」 「……そっか、そうだね」 後は部屋に戻ってイチャイチャ……と思っていたのだが、待っていたのは仁王立ちの紅豪だった。
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