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「・・・・・・あら。福之助さん、これ。この、あたくし」
「良く撮れているでしょう?」
俺は世辞は言わねぇ。
縁側にひらり舞う紅葉、秋の穏やかな黄金色の陽だまり。
ふっくらもみじにかぷりと食いつく真っ白な小雪。
幸せに細めたにゃんこの目。
何ともまあ、愛らしい姿じゃねぇか。
「僕は腕の立つ写真家でもありませんが、幸せな時間を切り取ることは出来ます。無理なさらなくていいんですよ。土鍋なんかよりもみじの方が、あなたの表情をずっと魅力的に写し出してくれる。そう思いませんか?」
「ええ・・・・・・」
「そのままでいいんです。小雪さんは小雪さんなんですから」
小雪はもう一度写真に視線を落とすと、にゃあごとひと鳴き。嬉しそうに頬擦りした。
「ありがとう、福之助さん。お気に入りの一枚になりましたの」
まったく、どうなることかと思ったが一件落着だな。
小雪はアルバムの最後の頁に、撮ったばかりのもみじの写真を貼り付けた。福之助が思いついたと言って、写真の白い余白に『秋深し 紅葉ほおばる にゃんこかな』と下手な歌を書いちまったが。小雪は喜んでいたみてぇだから、めでたしめでたしだな。
もちろん土産の饅頭も忘れず持って帰ったぜ。
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