『小雪』

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淹れたて熱々の煎茶をおそるおそる、まず一口。 ふうふう、ずずずと啜ってみれば、心の芯からほんわりあったまる摩訶不思議な飲み物よ。 朱塗りの半月盆に、紅葉を形どった饅頭が二つ。 「あたくし、その、ダイエット中でして。でも折角だもの、ひとつ頂きますわ」 小雪は盆を手前に寄せると、もう待ち切れねぇのか「にゃあご」と喉を鳴らしながら、ぱくりともみじに食いついた。美味そうに食うじゃねぇか。ダイエットなんざ、よせよせ。 「美味しいですわ!もう一つ・・・・・・ああ、駄目駄目。でも餡子の甘い味・・・・・・幸せだわぁ」 「お土産に幾つか包んでおきましょう、ね?」 「いいんですの!?」 きらん!と輝く小雪の猫目。気持ちはわかるぜ。ふっくら柔らかなカステラに、ほど良い甘さのこしあんときた日にゃあ、俺も思わず喉を鳴らしちまう。 すっかり緊張の解けた小雪は、茶を飲み飲み、どでんとくつろいでやがる。 おい、福之助よ。相談を忘れてねぇだろうな。 「さて、小雪さん。折り入って相談事があると言ってましたね?」 「そう、だん・・・・・・。ふぎゃあ!いやですわ、あたくしったら、つい」 いいタイミングだ、福之助。危うくただの茶会になるところだったがな。 「そうね、まず、これを見てもらえるかしら。うふふ、お恥ずかしいのだけれど」 何を照れてやがると横目で眺めていると、桜色の風呂敷の結び目をすうっと解き「ご覧になって」と一冊のアルバムが、ちゃぶ台に置かれた。
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