『小雪』

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一番最後の頁には二枚の写真。 《おデブちゃんの小雪。すっかり鏡もちで~す》 高級そうな椅子の上で、そっぽ向いて丸くなっている小雪。題字には苦笑せざるを得ねぇな。 《最近は無愛想なの。こっち向いて!》 日向ぼっこ中の一枚なんだが、むっすりしたツラで後ろをチラリと振り返っている。首の肉が、むにゅんと邪魔をしてちっとも振り向けていねぇんだが。 はああ、と小雪の深い溜息が縁側に消えていく。 「愛想も悪くなりますわ。こんなおデブちゃんじゃ、写真も嫌いになってしまいますもの」 「ふうむ。健康的であればそれもまた愛嬌だと思うんですがねえ」 フォローのつもりか、福之助。 まぁ、本音なんだろうが。この男、そんなに器用じゃねぇからな。 ばたむと、アルバムの表紙を重苦しく閉じる小雪。 「それでね。あたくし考えましたの。巷で噂の可愛い写真の写り方ですわ!」 「ほう。そんな噂が」 「ええ!ほら、これを見てくださる!?あたくしも、この白玉ちゃんのようにすれば、可愛く撮れるんじゃないかと思いますの!!」 「白玉ちゃん、ですか?」 小雪はアルバムと共に持って来ていた一冊の雑誌を取り出した。俺も見たことあるぜ。『月刊にゃんこの手』。業界で引っ張りだこの人気猫の特集を始め、読者の飼い猫写真の投稿で賑わう猫雑誌だな。
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