ねこぎらい

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ねこぎらい

 いつの頃からだろう?  とにかく私はアレが大嫌いだった。  丸く大きな、しかし残忍そうな瞳。  敵意と同じく巧妙に隠された爪。  ふとした瞬間に覗かせる鋭い牙。  そして何より、気配を消して我が物顔で、そこらじゅうを好き勝手に動き回るあの姿。 ――猫。  そう、あの猫という生き物に対して、私は物心ついた頃には既に憎悪とも恐怖心とも呼べるような、深い嫌悪感を抱いていた。  今日も私は、いつものように近所の商店街へと足を向ける。  空は青く澄み渡り、千切れた綿菓子のように白い雲が所々に浮かんでいる。  早春の木々は淡くも鮮烈な緑で梢を飾り、そよぐ風は肌を心地よくなでた。  それでも私は曲がり角にたどり着く度に足を止め、周囲にアレが居ないことを確認する。  壁に身体を押し付け、そっと道の向こうを覗き見て、耳をそばだてる。  臭いも音も姿も無いことを確認すると、私はやっと次の曲がり角へと歩みをすすめるのだ。  はたから見れば挙動不審かもしれない。  説明をしても一笑に付されるだろう。  それでも私は次の曲がり角に着くと、やはり足を止め、周囲を見回すのだ。
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