3 ママ友も大好き、イケメンコーチ

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「伊都君ももうそんな歳なんですねぇ」 「あはは、藤崎さんとこだってそうでしょ?」 「そうですけど。なんか不思議ですよねぇ」  なんだか会話がご近所のママさんの集いみたいで、これはこれで不思議だけれど。営業のいた時は帰りなんて九時に家につけたらラッキーって感じだったから。 「先生とか厳しいんですか? うち、女の子だから最近すっごい生意気で。女同士だから舐められてるのかなぁと。ここでビシッと先生に精神から鍛えてもらうっていうのもいいなぁって」 「先生って、コーチのこと?」  学校では先生って呼ばれるけれど、スポーツクラブだと、トレーナーとか、コーチ。って、そっか、あの宮野コーチは先生でもあるのか。 「どうかなぁ。あんまり厳しくなさそうだったよ」 「そうなんですか?」 「うん」  俺より、歳はいくつか下なんだろうな。若い感じがする。俺は結婚早かったし、子どももすぐに授かったから、来年、三十の大台に乗る。でも、宮野コーチは……何歳くらいかな。 「女の人なんですかっ?」 「男性ひとり、女性ふたり。三人で見てくれるんだ」 「どんな感じなんです?」  あ、伊都に教えてくれてたのが宮野コーチだったからか、彼のことしか覚えてないや。他の人はどうだっただろう。でも、帽子被って、水着で、プールにいる時、それと話しかけられた時とで、すごく印象が違ってた。  ――プールは二階なんですけど、三階が見学スペースになってるんです。上から見られるんですよ。  優しい人、だったのはプールの中でも、外でも同じだったけれど。  あぁ、そうか……背、というか、なんというか、間近で見た彼は、背が高くて、肩とか筋肉すごくて、事務仕事と家事育児でいっぱいいっぱいな俺とは、違ってて。 「美人コーチは! いましたか?」 「んー……どうだろう」 「じゃあ、イケメンコーチとか! いました?」 「え……ぁ」  彼の笑った顔を思い出した。 「いたっぽい! いいなぁ! イケメンコーチ」  うん……まぁ、イケメンって言えば、イケメン、かな。うん。 「ほ、ほら、藤崎さん。台帳合わせないと」  ママ友トークをしている場合じゃない。この数字の羅列を今日中に確認しないといけない。そしてそれを定時までに終わらせないと、学童の時間が延長になってしまうと、慌ててふたりとも机に齧り付いた。
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