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野菜ふた袋に肉少なめにして、って、伊都に聞かれたら、肉多め! なんて、ブーイングされそうだから、胸のうちだけで呟いて手を伸ばした。
「あ、すみません」
「ごめんなさい」
横から伸びてきた手とカット野菜の前で衝突しかけて慌てて、お互いの手を引っ込めた。
「あぁー! コーチだっ!」
慌てて謝って、そして、伊都の声に顔を上げた。
「あ……」
そこには同じように顔を上げる、その人がいた。
「宮野コーチ……」
俺がそう呼んだら目を丸くした。プールの水色に囲まれてる時にも、その後、まだちゃんと水をふき取らずに追いかけてきてくれた時にも気がつかなかった。彼の瞳がずいぶんと茶色なことを。
「佐伯さん、伊都君……あ、えっと」
それと、私服の彼は体型のせいもあるのか、モデルみたいだ。
――じゃあ、イケメンコーチとか!
「こんばんは、佐伯さん」
カッコいいモデルみたいだと思った。
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