1 お日さま燦燦

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 夏休み特別レッスンは毎日行われてるけど、送り迎えがあるから俺の休みの時しか連れて来れなくて、週二回のレッスン、土日のみ。  どうしよう、大丈夫かな。さすがに一時間も水見てたら、「恐怖」が触れるかもしれない。ちょこっとだけでも、ほんの一ミリだとしても、もしも俺に触れたら、その瞬間、あの時の全部が蘇ってくるかもしれない。 「お父さん!」 「うん。いってらっしゃい」  どうだ! と、着替えを済ませ、水泳帽に学校でも使っている紺色の水着を着た伊都。緊張が移らないように、余計な心配をかけないように、務めて笑って見せたけれど。 「お父さん?」  その時、もうすでにレッスンを受けたことのある子が真横を駆けて行った。ほんの少しだけ手がその子に触れた。ただ掠めただけ。それなのに――恐怖が。 「今日から入った、えっと……佐伯、いと、君」 「はい! 俺です!」 「おぉ、元気だね。宜しく」  伊都の元気で大きな声と、もうひとつ、落ち着いているけれど、はっきり聞き取りやすい優しい声、それに、目の前が明るく照らされる。 「コーチの宮野睦月(みやのむつき)です」 「……」  黒髪だけれど、水泳をやっているから? ところどころ茶色くも見える髪はまだ湿ってて、邪魔なのか適当に後ろに流してある。スッと通った鼻筋、大きめな口元は笑うと向日葵みたいだった。そして、目元をくしゃっとさせて笑う顔は、ほら、よく見かける。 「あ、息子がお世話になります」  絵本でよく見るお日様に描かれた笑顔にそっくりだった。
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