ずっと、待っている。

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ずっと、待っている。

 私はずっとここで待っている。  ここは静かだ。人はほとんど通らない。ときおり、私の前を横切る人たちは、淋しそうに、切なそうに歩くばかりで騒ぐ者は一人もいない。この川が、そうさせるのだろうか。  目の前に広がる川は、ひどく静かで、ひどく澄み切っていて、惹きつけられはするものの、同時に恐怖も覚える。見ていると、呑みこまれてしまいそうで。 「なにをしてるの?」  ふいにかけられた声に驚いて振り向くと、知った顔が不思議そうにこちらを見ていた。  変わらない人。  心の中でそっと呟いて、少しシワの増えた彼に笑いかける。 「べつになにもしてないさ。あんたこそなにしてんだい。早くお家に帰んなさいな」  せっかく会えたけれども。  素っ気なくひらひらと手を振った。  私の言葉に素直に頷いた彼は回れ右をしかけるも、思い出したようにもう一度こちらを振り返ると、 「君は、いつまでここにいるの?」 「ずーっと」  ずっと、私は待っている。 「そっか、じゃあまたね」  ずっと、私は待っている。 「はいな、またいつか」  ずっと、私は待っている。いつか天寿を全うした彼が、私を迎えにきてくれることを。  この、境界の川で。  終
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