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おやつを取り上げられた子どものような顔で、佐原が顔を上げる。
彼女の唇からは、垂れた糸の切れ端が伝っている。
「じゃあ、たっくん。今度、誘ってみる?」
「だれを?」
「しこちゃん」
「なにに?」
「こういうことに」
「えっ。いや、誘われても迷惑だろ!」
「いやいや。しこちゃんなら、たぶん来るね」
「やめてくれー、俺のなかであの子のイメージがくずれていく!」
「ほう、どんなイメージ?」
「清楚系?」
「わたしは?」
「……小悪魔系?」
「差別だぁ!」
「日頃の行いだろ!」
「しこちゃんのほうが、エッチだもん!」
「うわー、やめろー!」
聞きたくない情報が、次から次へと。
「まあま、たっくん、そんなに心配しなくても、だいじょうぶ」
「心配って、なんだよ」
「わたし、男はたっくんしか知らないよー」
「や、べつに、そういうこと気にしてるわけじゃない」
「にゅふふ、ほんとかなー? しこちゃんに嫉妬しちゃってたのでは?」
ぐっと顔を寄せてきたので、反射的に身を引いた。
佐原は、口もとに垂れていた唾液を、手のひらで拭う。
「……それは自意識過剰だ」
「まぁた、強がっちゃって」
彼女の腕が伸び、多加木を引き寄せた。
肉体が密着する。すべすべした肌が心地いい。
「つかまえたー」
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