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「木材がいいです」
木材は高くつきそうだが、想像以上に李下が売上を伸ばしていて、多少の余裕は出てきた。
「慧一はどうする?」
「木材でいいよ」
では二部屋分の床材を買って来よう。他に、壁も和紙のような雰囲気にしたい。天井も貼り換えると、かなり普通の部屋になる筈だ。
受付はそれなりにお洒落であったので、そのままで使用する。他に、休憩室もあり、そこもそのままで使用する事にした。
「なあ、露天風呂の部分、使用できないだろ?野草園にしてもいいかな?」
「いいけど、慧一がするの?」
慧一が楽しそうに頷いていた。
「よし、買ってくる順番と作業を決めよう」
全部、自分で行うが、事故物件や廃墟に住んでいたので、改修は慣れている。廃材置き場も巡り、より安くいいものを選んでみた。
外観は洋風であるが、中は田舎の農家のような造りにしてみた。
完成という所までくると、突然、黒川が荷物を持ってやってきた。
「守人様、否定されているらしいね。危険だから、ここに越して来る事にした」
どこに越して来るのだ。すると、慧一用に用意していた部屋に、家具を運び込んでいた。
「家賃は氷渡に渡したよ」
「やっと完成したのに……」
黒川は、普通にマンション分の家賃を払っていたので、当然のように休憩室も取ってしまった。
「一生懸命に掃除したのに……」
「休憩室は、共同使用でいいでしょ。風呂も共同でいいよ」
黒川は、人のいる部屋に帰るというのが久し振りだという。人のいる部屋ではなく、俺が使用する受付部分を通過しないと、部屋に行けないだけだ。俺の住居を通路に使用するのだ。
「慧一、奥の従業員休憩室を改造して、部屋にするね」
しかし、黒川の引っ越しを見た李下が、俺の部屋にやってきた。
「ええと、こっちが黒川の部屋だよね。俺は、こっちを使用する」
「え?」
やはり、氷渡に家賃を渡して来たという。志摩のために用意した、女子更衣室を改造した部屋が李下に取られてしまった。
「ほう。結構良く改造したね。それに広い」
二部屋の続きのような大きさで、それなりに広い。それに、トイレも風呂もついている。
「俺と黒川は、今の×では、五本指に入る強さよ」
それくらい、俺が危ないのだという。
「俺は、守人にならないけど。守人というのは、瞬間で×を皆殺しに出来る」
李下の目が、暗く光っていた。
「……知っているよ」
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