凪ぎの朝、その船では…

2/9
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 雲の多いある朝……  神戸港に停泊中の豪華客船クイーンエリトベス号の船尾で、二十五歳になる南 沙希(みなみ さき)は、 「天気はイマイチだけど……きょうも頑張るわよー」  沙希は船舶の一等航海士として、この船で船長見習い中なのだ。  クイーンエリトベス特製のブルーの制服を身に着けた沙希は、船内に戻ることにした。  見回りも兼ねて、一等船室のある廊下を通っていった。  まだ九時前で客のいない船内はシーンとしていた。 「きょうは何人のお客様が登場されるのかな……?」  それぞれの部屋の前を通りながら、沙希はつぶやいた。すると、  トントン……
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!