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――数十分後、私はサキュバス達が待機している別の部屋へと入りました。私が捕まえた獲物と一緒に。
「お待たせしましたわ。後は、あなた達の好きにしちゃって頂戴」
私が半ば乱雑に投げると、男は部屋の中央に倒れました。力なく倒れる姿は、まさに糸の切れたダミー人形のよう。
「えー何ですかこの疲れ具合。もしかしてカミラさん、約束破って沢山吸っちゃったんじゃないんですかあ!?」
「違いますわ。ちょっと別のことをしてたんですの」
私の言い訳に眉を潜めるサキュバスが、私の身体をじっと眺めます。そして、私の下半身およびそこから漏れているものを見て、大体を察しました。
「あーっ! カミラさん、先にシちゃったんですか!? 良かったんですか、それ!!?」
「……ちょっとその餌のことが気になっちゃいましてね。でもいいじゃない。あなた達には、獲物の『経験』の有無なんて大して関係ないんですから」
「まあ、そうですけどお。カミラさんは良かったんですか? 先に手なんかつけちゃったら」
「私は最初に口も付けたから良いんですの。それに、私にとってもシてたかシてなかったかの差なんて、食材が廉価か高価かの差に過ぎませんわ。どちらも、美味しい好物であることに変わりはなくってよ?」
私の説明に、そのサキュバスはなんとか理解してくれたようです。おっと、いけませんわ。ここでずっと置いてけぼりを食らっている彼に、今の状況をちゃんと説明して差し上げませんと。
「この方達は、サキュバス。あなたの血を吸う代わりに、あなたの精をむさぼり食らう者達。彼女達に精を採られた者は、やがて衰弱し命を失います。せいぜい、彼等の腹が満たされる前に逝かないことですわね。それでは」
そう言って、私は部屋を後にします。それを合図に、サキュバス達は一斉に獲物へ群がる獣たちへと変貌いたしました。けれども、私が扉を閉める直前、彼が彼女達に見せたあの表情は一体何なのでしょうか。状況を理解されているようなのですが、全く絶望しているように見えないんですのよね。
さて、彼女達のお食事の真っ最中に、私は彼がいた部屋を物色してみることにします。きっと、この国に関係のある面白い情報が得られるかもしれませんわ。
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