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部屋の中を荒らしていると、サキュバスの皆様が部屋の中に入ってきました。
「あら? もう食べ終わっちゃったんですの?」
「ええ。一人二口ぐらいでもうおしまい。お腹いっぱいになる前に、向こうが事切れちゃいました」
「まだまだ食べ足りないです。次の獲物の場所へ行きましょう」
あらまあ。彼女達の旺盛な食欲には、本当に溜息が出てしまいますわ。
私は部屋にあった時計を見ます。日の出はかなり先のようで、狩りの時間はまだ十分に残されているようです。良かった。太陽が出てしまったら一大事ですわ。ひとたび紫外線を浴びてしまったら最後、吸血鬼である私の身体は焼け焦げてしまいますもの。
「では、次の獲物の場所へ参りましょう。漂う香りで、既に目星は付いておりますわ」
というわけで、次に私達が襲撃したのは、この建物から少し離れた位置にある一戸建ての住宅。なぜそこを選んだのかと申しますと、その二階の一室から非常に芳しい香りがしていたからですわ。
私の魔力を以てすれば、窓の解錠などお茶の子さいさい。手など使わず空けられますわ。
窓がひとりでに空いたように見えて、中にいた獲物はびくりとこちらへ振り向きました。そして、仰天しておりました。無理もないでしょう。窓から無数の蝙蝠の群れと共に、私という恐るべき存在が入って来たのですから。
月の光を背景に、獲物に自慢の八重歯を見せつける私。そして、命の危機を察知し、恐れ戦く獲物。ああ、この瞬間がまたたまらないんですの!
しかし、ここで思っていたのと違う反応がやってまいりました。
「か、可愛い子が来たあああああ!」
なんで喜んでますの?
私はつかつかと獲物に歩み寄り、その肩をむんずと引っ掴みます。鋼鉄の鎧すら貫通せしめる私の鋭い爪が食い込めば、獲物も少しは状況を理解出来ましょう。
けれども、なんだかあまり変わらない様子。
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