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さて、この調子で二~三人ほど食してきたところで、腹も十分に膨れて参りました。ここからが本番でございます。
「さて、シエル。これから、あなたが提案したことを実行に移しますわ。準備はよろしくて?」
「問題ありません! まだ夜明けまで十分に時間も残ってます。じゃんじゃん獲物を捕獲していきましょう!」
シエルが応答すると同時に、他のサキュバス達も鬨の声を上げました。その手には、彼女らが魔力で作り出した、縄やら枷やら猿轡やら。
――数時間後。
場所は変わり、私達は人里離れた山間部にいます。森が鬱蒼と広がる自然豊かな地域なのですが、私達はそこで捕まえた獲物たちを並べておりました。
お目当ての獲物たちは、私が思っていたよりも簡単かつ沢山手に入りました。その数は、両手両足の指の数を軽く凌駕しております。シエルの言っていた通り、本当に増えておりましたのね。それにしても、彼等から感じられる芳しき香り……もし今の私が満腹でなかったなら、理性を押さえるのはとても不可能でした。
獲物達の身形やら雰囲気から察するに、彼等は人間達の群れから捨てられたような存在なのでしょう。町や都市の中央で見られる人たちとは、何かきらめくようなものが全く感じられないんですもの。もっとも、それは私達にとっては関係の無いことですけれど。
さて、彼等を集めてこれから私が何をするのかと申しますと、
「シエル達、離れなさい。これから造りますわよ」
サキュバス達に合図をすると、私は森の方へ手を翳し、ありったけの魔力を放出いたしました。
森が一斉に切り開かれ、広場となった空間一面に奇怪な模様が描かれた魔法陣が形成されます。やがて地響きが発生し、その中央から巨大な何かがせり上がりました。
それは、城でした。黒光りする外壁が印象的な、石造りの巨大な城です。私の故郷をイメージした、吸血鬼の魔城でございます。
これを造って何をするのかと申しますと――私はくるりと獲物達の方を向き、城を背景にして言い放ちました。
「これは、あなた達の新たな住処となる畜舎。あなた達はこれから私達の家畜となって、幸福な短い時を過ごして頂きますわ」
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