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そして冬樹は……。
深春は後をつけてくる兄の存在に気づいていなかった。靴を履いて玄関の扉を開けたところで背後からランドセルごしに蹴飛ばされ、前のめりに転んだ。
「ハハッ、ばーか。ざまぁ」
一通り笑ってから冬樹は深春に駆け寄って頬に触れる。
「あーよかった。可愛い顔に傷なんてついたら大変だからなぁ。あ、逆に心配されて普段より構ってもらえるかも? どうせ皆に愛されてるからさ。良いよなぁ深春。大事にされて」
「お兄ちゃん」
冬樹は弟が反応すると思っていなかったのか、まるで猫が喋ったのを聞いたような顔をした。
「なんだよ」
「そんなに僕を殺したいならさっさと殺してよ」
淡々と言った深春は乱暴に押しのけられた。
「あああうっぜえッ! 殺せるもんなら殺してえよ俺だって! だけどさぁ、無理じゃん。殺したら捕まっちゃうよ。お前のせいでなぁ!」
「もう行くね」
だんだんとヒステリックになる兄に背を向けて深春は歩き出した。何であんなことを口走ったのか自分でも不思議に思っていた。
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