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一ヶ月後。
純也の売上が落ちて、ナンバーワンの座から転落した。
常連客の一人が来なくなったのが原因だという。相当貢がせていたようだ。
まあ、来なくなったきっかけをオレは知っているけれど。
アルバムの写真が入れ替えられる。
ナンバーワンが屈辱の2ページ目へ。
オレたちアリバイ枠には何の変動もないけれど。
ミーティングが終わり、今日も店は開店する。
「本日はご来店ありがとうございます! ホストクラブ「Red Circle」へようこそ!!」
ホール一杯に響く声。
今日もいつもと変わらない宴の夜。
ヘルプに入ろうと準備していると、ボーイが肩を叩いた。
「翔吾さん、本指名です」
「え?」
本指名?
今日は常連客の誰からも連絡来ていないけれど……。
不思議に思いながら迎えに行くと、倫子が手を振っていた。
「来ちゃった」
「来ちゃったって……」
黒髪と赤い口紅で、今日も派手なキャバ嬢風。
本当は違うくせに。
でも、なぜか良く似合う。
「依頼、完遂したからお祝い」
「オレ何にもしてないけど」
「黙っててくれたじゃない」
おかげでスムーズに解決した、と倫子。
VIPルームでハメを外していた証拠を抑えられて、奥様の方は否定も逆ギレもできなかったという。
ていうか、いつの間にそんな写真を。
探偵怖え。
「このお店に押しかけて来なかった?」
「いや」
「よかった。依頼人に無茶なことしてほしくないしね」
多分一番いい方法で丸く収まった。
オレと倫子は顔を向かい合わせて笑う。
「乾杯しよ。ハウスボトルで」
「シャンパン入れないの」
「だーめ」
倫子は笑いながら断った。
指名してくれた客に強引にシャンパン入れさせるホストには、オレはなれない。なれないけどまだしばらくはホストを続けるつもりだ。
今日の水割りは妙に美味いし。
アルバムの真ん中らへんにやっと名前が出る、ランキング外のホスト。
それでも、楽しいのは楽しいんです。
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