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「初めてのご来店ありがとうございます!ホストクラブ「Red Circle」へようこそ!!」
初回客が来たか。
常連客のテーブルで台を拭きながら、翔吾はフロアに響く声に耳を向けた。
七月も終わりかけ、本格的な夏の夜。
開放的になった女性達が「ホストクラブ初挑戦♪」と気軽に来店するのは毎年おなじみの光景だ。
街のキャッチも成功率が高めでやる気が出るのか、やたら気合いが入っている。
うちの店のギャル男ホストも、夏じゃね?夏だよね?な、よくわからないノリで接客をしている。
「翔吾さん、ここ終わったら次、あの卓っス」
隣に座るロッシーが耳打ちする。
「初回客だな」
「そうスね」
オレの源氏名は翔吾。32歳。
名前のホストっぽさに反して、あんまりホストとしては稼いでいない。
オレに話しかけてきた若者がロッシー。22歳。
ホストでありYouTuber。
どっちも稼ぎは冴えなくて、どちらかを辞めたら家賃払えねぇ、と嘆いている。
オレたち2人とも、本指名で稼ぐホストというよりは、各テーブルのヘルプに回って調整したり状況をマネージャーに報告したりするホストで……。
まあ要するに売れてないのである。
このテーブルの客は常連の24歳女性。
この若さで常連ってことは、つまり夜のお仕事の人。
爆笑しながら、
「ていうかマジありえんし。ゆーぴょんホント殺すからね」
と担当ホストの肩をバンバン叩いている。
ゆーぴょんとはうちのNo.3、ギャル男ホストの事だ。
「殺すとかマジないし! え、ふつーじゃね? 翔吾さんもそう思うっしょ?」
いきなり話題を振られる。
オレは水割りを作る手を止めて、
「オレはゆーぴょんがナシだと思う」
とオレなりの意見を述べた。
「ほらぁ!」
客が勝ち誇ったように胸を反らす。
ゆーぴょんの気を引こうと着てきたのだろう、胸元の空いた服からおっぱいがチラリとみえる。
ゆーぴょんは余裕の表情で、
「いや翔吾さんは昭和の人間だから」
と、言った。
おいコラ。
確かにホストにしては歳食ってるけどな。
「昭和! え、翔吾さん何歳?」
「23ちゃい」
「え?」
「吉原年齢で」
「ウケる!」
客からひと笑いもらって、オレたちはゆーぴょんのテーブルから初回客のテーブルへと移動した。
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