アリバイ枠の翔吾さん

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「初めましてー!」 「ノリうざかったら言ってね」 初回客は一人で来ていた。 初めてのホストクラブ、女性はグループでの来店がほとんどで、一人で来るのは他店で慣れた女か夜職の女か、メンタルやられている女が多い。 酒が好きで安く飲みたいだけの一人客もいたけど。 どちらにしろ客には変わりない。 また来たいと思われるように楽しく接客するだけだ。 「オレがロッシーでこっちが翔吾さん」 「翔吾です」 「君の名は?」 ロッシーが聞く。 客は黒髪ロングの20代後半。あっさりとした顔立ちに赤い口紅が映えている。 タバコが似合いそうな雰囲気だが吸ってはいないようだ。 「え? なに、映画ネタ? ウケる。佳奈だよ」 「佳奈ちゃんね」 ロッシーがポンポン会話を繋げる。 とりあえず映画の話題で佳奈をリラックスさせる。 普通に客の素性を聞くこともあるけど、警戒する客もいるらしい。 まあオレたちにも後ろ暗いところがないわけじゃないし。いろいろ聞かれたくないっていう気持ちはわかる。 「で、オレ映画館で三回見てんの。DVDも買う」 「どんだけファンなん?!」 ロッシーの話に佳奈が笑う。 「翔吾さんにも薦めてるけど全然見ないんだよ」 「えー? 見よ? 見よ?」 若者の猛攻に、 「オレ恋愛もの全般ダメなの」 と、返す。 というか三十超えてから流行に乗っかる努力を放棄しました。 「それよりさ」 オレはフロアのボーイに頼んで、アルバムを持ってこさせた。 「佳奈ちゃん。場内指名、誰にする?」 「場内指名?」 「この中から好きなヤツ選んで。呼んで来るから」 アルバムは必要以上にどデカく、物々しい作りだ。 その白い革張りの表紙を佳奈はめくる。 「えー、迷う。指名ってお金かかんの? 」 「場内指名はかからないよ」 場内指名だけはね。 一ページ目には店の名前が箔押しで入っている。 それをめくると、最初にNo.1ホスト「純也」の写真が現れた。 Red Circle不動のNo.1。マスコミ取材もされる有名人だ。 続いてNo.2「玲汰」、No.3「ゆーぴょん」とランキング入りホストが続く。
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