アリバイ枠の翔吾さん

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佳奈は店の悲喜こもごもがはさまったアルバムを閉じると、ひょい、とオレに寄越した。 「ナンバーワンもここに呼べるの?」 「もちろん。もしかしてテレビ見て純也に会いに来た?」 「まあね」 その割にはあっさりした反応。 ボーイに耳打ちして純也をこちらに回すように告げる。今VIPルームで接客中だから少し後になるとのこと。 さすがアルバムの1ページ目を飾るナンバーワン様だ。 オレがボーイと打ち合わせしている間、ロッシーと佳奈が喋り続けている。 「佳奈ちゃんはなんでホストクラブ来たの?」 「あー。うち地方でキャバやってんの」 「キャバ嬢? マジ? オレキャバ嬢大好き」 「歌舞伎町に羽伸ばしに来た」 「えー! で、この店来たの。マジヤバくない。出会いとか運命とかに感謝!」 「感謝テキトーすぎん?」 佳奈のノリも良くなってきた。 オレは会話を聞きながら水割りを作る。 オレが見る限り、佳奈の言動には少し違和感があった。 ただ証拠がつかめなくて、もやもやとしている。 意を決してオレはロッシーに聞いた。 「ロッシー、この前のイベントの写真、スマホにある?」 「店のイベントの? あるけど、何突然」 「あの時の、純也の王子様コスプレの写真ない?」 「あー! ある。ちょっと待ってて」 ロッシーはスマホ画面のカメラロールを開き、写真を探し出した。 その隙に、オレはスマホのメモアプリに文字を打ち込んで、佳奈にさりげなく見せる。 周りに聞かれたくない事だ。こうするのが一番いい。 画面にはこう表示されている。  [もしかして、探偵?] 佳奈は驚愕の顔でオレを見た。
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