アリバイ枠の翔吾さん

6/8

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「なんでバレるかなあ! わたしもまだまだって事?」 佳奈、もとい西東京合同探偵事務所の桂倫子探偵はファミレスのテーブルで嘆いた。 名刺を眺めながらオレは答える。 「別に怪しいわけじゃなかった。ただ一人で来る初回客にいい思い出がなくて注目してただけ」 「へえ、どんな思い出?」 「ガチ惚れされてストーカーされた」 「メンタルがアレな子が多いわけね」 ホストクラブでの佳奈と、今の倫子。 同一人物のはずなのに喋り方が全然違う。 まずい、人間不信になりそう。 倫子には一応2時間きっちり店にいてもらい、送りホストにオレを指名させた。 その場で連絡先を交換し、初回アフターの体でファミレスで落ち合った。 「でも私、探偵って証拠は見せてなかったはずだけど」 「だからカマかけた。週刊誌の記者とかも疑ってみたけど」 「うそぉ」 倫子はげんなりとしていた。 「初回で一人での来店なら、他のホストクラブに慣れている初回荒らしかと思ったけれど、ホストクラブのシステムに慣れていなかったし……。慣れていないふりをする客もいるけど、そんな感じじゃなかった」 「人間観察エグくない?」 「まさか探偵に言われるなんてな」 倫子の言葉に、オレは苦笑いで応えた。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加