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「夜職には見えないけど完全なカタギってわけでもない雰囲気。酒好きだとしたら量飲んでないし、かと言ってお目当てのホストがいるわけでもない……」
そう考えていたら、倫子がアルバムの中の純也に反応した。そしてオレは思い出した。純也の常連客に、金持ちのマダムがいることを。
「探偵雇うのも厭わない金持ちだと聞いてて、それでふとひらめいたわけ。で、なにしてたの。浮気調査?」
「その通りよ。依頼人の奥様が純也とずぶずぶの不倫関係らしくて、証拠をつかみに来たわけ。不貞行為と散財の。離婚する気はなさそうだけどね」
そう言って倫子は、ファミレスのドリンクバーのアイスコーヒーを口に含む。
赤い口紅が少し取れる。
「で、どうなんの、私。店に報告すんでしょ」
「報告にしてもオレにはメリットないよ」
倫子は不思議そうな顔をした。
「じゃあ、何。てっきり奥様からの搾取を邪魔すんなって言われるかと思ったのに」
「まさか。店内で刃傷沙汰は勘弁してほしいってこと。あとはご自由にどうぞ」
「ナンバーワンの売上減るかもよ?」
「危ない客に通い続けられる方が怖い」
黙っててやる代わりに、オレの依頼も受けてくれ。
オレは倫子に言った。
「うちのホストとトラブルになる前に、うまいこと片付けてほしい」
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