知らない

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 夏休み目前の  昼休み  「ちょっと!柚香!また告られたって?」  飲んでたお茶にむせる。  「もぉ、京香!急に後ろから変な事言わないの!柚香むせちゃってるじゃない!」  噎せる背中を撫でてくれながら京香を睨む。  京香はごめーんと誤ってるのかなんなのかわからない返事をして、隣のイスを引きずり ながら私たちの机に買ってきたパンを出して食べ始める。  「で?どうしたの?」  「うん、断った」  「なんで柚香ばっかりもてんのかね?」  頬づえをつきながら私を見る比奈。  京香が笑いながら  「うーん、普通だからじゃない?」  「何それ!」  膨れる私に笑顔で続ける。  「いい意味での普通だよ?」  「でも、わかる気がするわ。」  比奈はニコッと笑ってお茶の入ったペットボトルに口をつける。  そして柚香と私の全身を見渡して言う。  人懐っこい笑顔とか  長めだけど不潔そうに見えない髪の毛は天然の濃い栗色だからとか  とても美人でも、とても可愛くもなく  スタイルは細いけど胸はちょっと残念な感じで  普通より小さめな顔と標準的な身長  「ただ…」  人の容姿を好き勝手に!  私はかなり不貞腐れながら2人とは反対の方を向いて  「ただ何よ?まだ普通って言い足りないの?」  まわりでお昼休みを過ごしてる友達が注目する程の声で笑うと比奈は私の顔を覗き込んできた。  「たださ、時々っていうの?ふとした時の柚香が凄くキレイで可愛く見える時があるんだよね。」  目を細めて微笑む比奈の隣で京香も頷く。  「そうなんだよね。それは中学の時から思ってた。クラス違ったし話した事なんて無かったけど、思わず目で追っちゃったりしてさ。」  …褒められたの?かな…? くすぐったくて俯いた。
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