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そんな事考えていると足が中々進まない。
ノロノロと教室に入ると
「柚香!おはよう!」
机に座ってヒラヒラ掌を降る白井京香。
腰まである髪を歩く度揺らす。
私より少しだけ高い背。
一重のタレ目が人懐こさを出す。
京香とは中学が同じだったけど、あの頃は付き合いはなかった。
志望校が同じだとわかってから仲良くなって。
リュックをロッカーにしまって京香の向かいの席に座った。
廊下側の一番後ろ
俯いて本を読んでいる小林君が目の端に入った。
「…………」
教室で本を読む小林君は
俯き、長めの前髪とメガネで目元を隠して
人の視線から逃げるように
周りから向けられる興味を拒絶するように
風に煽られた髪の毛をうっとおしそうにかけ上げたのと同じ人には見えない。
メガネを外した時の2重の切れ長の目
大きい黒目に真っ黒な長いまつ毛が密集していて
その瞳には
強い意思が宿っていた
思い出しても同じ人だとは思えない。
今まで気にした事はなかったけど
艶のある細い針金のような真っ直ぐな黒髪。
本のページを捲るたび小さく揺れる前髪の隙間から覗く横顔
真っすぐに伸ばされた背筋
軽く支える程度に本に添えられている指は長く筋張って
その姿を綺麗だと思ってしまった。
そして
気付いてしまった…
あんなオーラ放ってた?
触れるな
構うな
強いオーラに息をのんでる自分がいた。
「ねぇ、柚香大丈夫?」
目の前から顔を覗き込んできたのは坂口比奈。
1年で同じクラスになってからの付き合い。
カラーの影響で色の抜けてる茶色の髪。
全体的にこじんまりしている比奈は可愛い。
突然かけられた声に我にかえる。
「え?何が?」
呆れたため息が吐かれ
「ボーっとしてたよ。」
慌てて小林君から視線を外して比奈に視線を向ける。
「えっ?そう?寝不足だからかなぁ」
よくわからない返事を返した。
それからも次々教室に入ってくる友達を見ながら、小林君を目の端に捉えていた。
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