知らない

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 もぉっ重いって!  なんで新宿の本屋に予約すんのよ!  頼まれたのは本の引き取り。  予約なら近所でいいじゃん!  リュックの中で存在を主張する数冊の本。  途中、公園を見つけベンチにリュックを下ろした。 入口で買ったレモンジュースを飲む。 喉を通り過ぎる時にレモンが強く主張する その刺激に眉根が自然による。 ふうっと息を吐くと、少し離れたネットに囲まれたコートの中から大きな声が聞こえてきた。  声のする方を見ると  3on3をしている私と同じ年くらいの男の子。  一際目立っていたのは…  今朝見たばかりのあの瞳  「小林君…?」  彼は当然、私には気付かなくて  友達と一緒に笑ってふざけ合っていた。  まるで別人  見せる笑顔も コートの中を自由に走り回る姿も 私が… うぅん……違う… 誰も見たこともない小林君だった。 乱れた髪の毛を頭ごと後ろに振って…汗が散る。  私はただただ小林君の姿を追っていた。  転がるボールを拾って、乱暴にリュックを肩にかけると、大股でコートを出ていった。  …なんだったの、アレ
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