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私は小林君を避け続けた。
誰もその事には気づかないけれど
元々ここでの影の薄い小林君。
気にする人はいない。
ただ…
小林君の瞳が時々刺すように私を見ていた。
私だけが気づく視線…
夏休みも目前に迫った頃
体育の時間に貧血で目眩をおこした。
保健室で保冷剤を貰って教室に戻る
!!!
開けた扉を後ずさりながら閉める。
廊下側の席の小林君は窓を開けて
「…入ってこいよ」
首を振る私にあの冷たい笑顔で廊下に出てくると私の腕を痛いほど掴んで教室に引きずり込む…
勢いよく扉が閉められダンッと顔の横に手がつかれる
また壁ドン…
もぉやめて欲しい…
反対に逃げようとすると足で阻止される
「なに泣きそうになってんの?」
イヤな笑顔
イヤな笑顔
ホントこの人誰よ…
耳元に顔が近づく
強ばる私を気にすることもなく
「スマホ貸してみ」
!!!!!
耳を塞いだ私に
「スマホだよ!早くしろよ」
背中を向けて自分の席に頬づえをついて横目で催促された。
ノロノロとスマホを差し出すと
「暗証番号」
「…………。」
「あ ん しょ う ば ん ご うっ」
何も言わずスマホを差し出した私を一瞥すると何かを打ち込み机の上に乱暴にスマホを滑らせた。
慌ててスマホを取ると小林君のポケットから着信音が聞こえてきた。
胸ポケットからスマホをダルそうに取り出すと画面を確認して切る。
メガネを外し、前髪をかきあげ
形のいい薄い唇の端を上げると
「よろしくな。柚香」
直ぐにメガネと前髪を元に戻す。
私は何も答える事が出来なかった…
チャイムの音が終業を知らせる。
いつものように俯き本を広げ顔を隠す。
「席につけよ…」
何も考える事が出来なくて言われるままに席についた。
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