アルとミーシャ

4/13

198人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 五年前、アレッサンドロがロシアへ出張に赴いた時、勧められて遊びに行った店が、ミーシャが働くところだったのだ。それが出会い。若い頃から半ば色狂いの傾向があるアレッサンドロは、一目でミーシャに惚れた。……実は、ミーシャはその時、踊り子ではなかった。フロアのウェイターとして、たまたまアレッサンドロのテーブルへグラスを運んだだけの、一瞬。すぐに立ち去ろうとしたミーシャの腕を、アレッサンドロは掴み、思わず英語で「幾らだ」と訊いた。  ミーシャは驚いてぱちりと瞬きをし、暗い店内でまじまじとアレサンドロの顔を見た。そして「店長に聞いて参ります」と流暢な英語で答えた。  そして次にアレッサンドロの前に現れた時、彼は女たちに紛れて、ステージの上に立っていたのだ。それまで踊っていた女たちが霞むほどに、スポットライトの下でミーシャは妖艶に舞った。時折の流し目は確かにアレッサンドロを捉え、思わせぶりな仕草で衣装を一枚ずつ脱いでいく動きは、下手な娼婦よりもずっと淫猥だった。最後にはほとんど透明な布だけを纏い、惜しげもなく肌を晒し、紐のような下着を見せつけるようにしてステージの下に降りてきたミーシャは、迷いのない足取りでアレッサンドロの目の前にまで迫った。そして、こう言い放ったのだ。 「幾らの価値を付けてくださいますか、ボス?」  強い光の中で踊り続けて、少し汗ばんだ肌。上気した頬。  何よりもその挑発的な瞳に、アレッサンドロは負けた。抱き寄せて、耳元で。 「淫らな天使が求める全てを」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

198人が本棚に入れています
本棚に追加