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それでミーシャはアレッサンドロのものに……、なったわけではなかった。ミーシャはそれから五日、アレッサンドロにここに通うように求め、そして彼の前で踊った。もちろん踊ればチップがミーシャに入ったし、アレッサンドロも破格の値を与え続けた。日に日に婀娜っぽさを増していくミーシャの肢体に、今すぐめちゃくちゃに抱き潰してしまいたい欲を堪えて、大人しく通うこと五日。ミーシャが踊り終えて去っていったステージ裏へ、アレッサンドロは店長に通された。控え室の一つにいたミーシャは彼を見ると薄く微笑んで、その場で漸く、アレッサンドロの欲だけを受け止めたのである。
手の早い男だ。先刻のミーシャのステージだけで臨戦態勢になっていた下の剛直を、準備は済んでいると煽るミーシャの後ろに埋め込みながら、圧迫感に喉を逸らす美しい青年に「結局受け入れるなら、何故五日も弄んだ?」と意地悪な声で問う。ミーシャは青みがかったグレーの瞳で確かにアレッサンドロの目を捉え、ふっと笑った。
「一晩だけで満足するんですか?」
見た目からして威圧感に溢れる男の前で、大胆不敵に。アレッサンドロはもうミーシャの虜だった。五日間見つめるだけだった艶美な肢体を腕に抱き、時に他の男にさえ晒された綺麗な色をした後孔を自分で満たす。そうしながら、アレッサンドロはミーシャにイタリアに来るよう口説き落とした。半世紀以上の人生の中で初めて運命を感じている、後にも先にもこんな出会いはない、死ぬまでお前に惚れたままだ、手放したくない、愛している……。ミーシャは快楽を注ぎ込まれながら、雨のように降り注ぐ熱烈な告白に耳を犯された。断続的に上がる嬌声の最中、妖冶な唇が弧を描く。
「イタリア男って、やっぱり口が、巧いんですね……っ」
「もちろん、口説き文句は星の数ほど知っているがな、『死ぬまで』なんて言葉を使ったのは、
お前が初めてだ」
「んっ、それ、ぁ……っ、ふふっ、どう証明、してくれるんですか?」
「……っは、傍にいれば分かる……!」
その一言、その一夜で、ミーシャがどう心を決めたか、ともかくアレッサンドロはミーシャを自分の本拠地であるシチリアに連れ帰った。
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