その部屋、訳あり八畳間 その1 ~その調べ~

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「いつもありがとね、平ちゃん」 「いえいえ、それはこっちですよ、保子さん」 この日、俺は保子さんの買い物の手伝いをしていた。 保子さんは80代のおばあちゃんだ。 月に何度か買い物などの手伝いを頼んでくれている。 できる限り自分で買い物に行くと決めている保子さんだが、重いものは大変だからだ。 元々は先代の大家さんが保子さんを紹介してくれた。 「じゃあ、今日はこれで失礼します」 「あら、お茶でも飲んでいけばいいのに」 「いえ、今日はこの後橋本さん家に行かせてもらうことになっているので・・・・・・」 「あ、そうだったわね。暑いから気をつけてね」 「はい、ありがとうございました、保子さんも熱中症には気をつけてくださいね」 いつもなら保子さんが出してくれるお茶をいただいて世間話をしたりちょっとしたお手伝いもしたりするのだが、今日は午後から初めてのお宅へ行く予定が入っていた。
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