第31話 予感

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    *    *    *  新宿バードランドは、JR新宿駅南口から十分の所に、国内最大級の屋内型遊園地としてあった。  地上八階建ての各フロアに、楽しい事がぎゅうぎゅうに詰まってる。  子供の頃以来だったけど、外観も内装も綺麗なまま、さほど変わってないように見えた。 「変わってないな」  懐かしく呟くと、三沙くんが自分の事のようにはにかむ。 「なるべく雰囲気を壊さないよう、二年前にリニューアルしたんだ。そう言って貰えると嬉しいよ」 「三沙くんも関わったの?」 「父さんに、全面リニューアルじゃなくて、このままの雰囲気を残した方が良い、って主張したのは俺なんだ」 「へえ。何だか子供の頃に戻ったみたいで、凄く居心地が良い」  三沙くんはよく笑う。まだ仕事をした事のない学生特有の性格か、無邪気にも思える笑みだった。 「へへ。あゆちゃん、好きだったアトラクションとかある?」 「ゴーストツアーズ!」  僕が、案内係のお姉さんに憧れて、何回も通った場所。  アトラクション自体は、スクリーンの映像に合わせて四十席ほどの座席が揺れる、遊園地にはよくあるものだったけど、ここのは前室でイントロダクションがあった。  初めは明るく売り物件の屋敷の説明をしていたお姉さんが、幽霊の声が聞こえてきて、震え上がって僕たちの無事を祈る所までがワンセット。 「ああ、ゴーストツアーズも、マイナーチェンジして新しくなったんだ。乗る?」 「うん!」  祝日だから、待ち時間は三十分。三沙くんはズルしたりせずに、一般の人と同じように並んで待った。  明るい三沙くんの笑顔は、寂しい僕の心を温めてくれた。  僕たちの番になる。  前室で整列していると、白衣で白髪の男性と、ツアーガイド風のお姉さんが現れた。実際は若い男性で、もじゃもじゃの白髪はウィッグなのが分かる。    へえ! 二人になったんだ。 『皆さん、こんにちは!』  白衣の男性が元気よく語りかけるけど、こんにちは、と返事はパラパラとしか返らない。 『おや、元気がない。お腹が減っているのかな? スカイビューの景色と美味しい料理が三つ星レストランにも負けない、八階のビュッフェをお勧めしますぞ』  おどけたゴリゴリの宣伝に、子供たちの笑い声が上がる。 『では、レストランで和牛ステーキを食べた気分になって……こんにちは!』 「こんにちはー!」  みんなと一緒になって、僕も声を上げた。
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