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『私は、この屋敷の管理と研究を任されている、博士じゃ』
『博士、私たちの物件に興味を持ってくださった方が、こーんなにいーっぱい!』
お姉さんが胸の前で指を組んだ後、両手を広げ、オーバーアクションに笑顔で喜びを爆発させる。
そう! この、お姉さんの演技が好きだった。
『ふむ、お買い得物件ですぞ。ちょっと同居人が居る事を、ご了承頂ければ……』
『博士博士! シーッ!』
お姉さんが慌てて手を振って、唇の前に人差し指を立てる。
『隠すから、後で問題になるんじゃ。ほぉら……』
風の唸りのような、獣の咆哮のような、地を這う声が聞こえてくる。
『同居人も、君たちを歓迎してくれているようじゃ。隅々まで内見して、そして、気に入ったら、是非契約書にサインしてくれたまえ』
お姉さんが、僕らに身振り手振りで乗ってる最中の注意事項を伝えた後、唸りがだんだんと大きくなって、身を震わせて耳を塞ぐ。
『ひゃあああ。皆さーん、くれぐれも、くれぐれも、安全バーから手を離さないでくださいね! この間のツアーでは、お帰りが三人、足りませんでした。あっちの世界に行ってしまったら、帰ってこられるか分かりません。どうかご無事でー!』
僕は子供たちと一緒に目を輝かせて、その演技に見入った。
そして乗った十年ぶりのゴーストツアーズは、予想以上にパワーアップしてた。
屋敷の中を徘徊し、時に画面に迫ってくるゴーストの映像が、鮮明にリアルになってたし、時折風や水が客席に噴射されて、ヒヤリとした。
キッチンで骸骨が骨付き肉をつまみ食いし、あばらの間からボロボロ零している場面では、肉の良い匂いが漂った。
『おかえりなさーい! えっと、一人、二人、三人……一人足りなーい!!』
そうお姉さんの悲鳴が上がってから、暗かった場内は明転した。
オチは同じなのに、何回乗っても楽しい。
僕は頬を紅潮させながら、シートベルトを外して出口へと向かった。
「楽しかった? あゆちゃん」
「す…………っごく!」
溜めて言う僕に、三沙くんが笑う。
「はは。良かった。俺は、シューティングが好きなんだよね」
「あ、ホールドアップ&ダック?」
「それそれ!」
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