第1章  お疲れさまの金曜日 

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「この前、部屋に泊まったとき、土日の予定を訊いただろ。あのあと手配した」 「さすが敏腕コーディネーター。仕事が迅速ですね」 「ええ、もちろん。日本滞在はあと約四週間の予定なので、手配は早め早めを心がけております。観光案内はもちろんデートコースも完璧ですよ。お客様のご要望は?」 「えー?」  祐樹はすこし考えるふりをして、ちらりと色っぽい目線を投げた。 【きみと一緒ならどこでもいいよ】  返事は北京語で返された。人格チャンネルを切り替える必要があったらしい。  うっすら染まった頬がかわいい。これが挑発になるとわかっているのか。…いないんだろうな。    孝弘はとびきりやさしくあまく微笑んで、祐樹の耳元でささやいた。 【俺もそうだよ。きみと一緒ならなんにもいらない】  孝弘の返事を聞いて、祐樹はこまってうつむいた。臆面もない口説き文句をささやかれた右の耳が炙られたように熱かった。
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