第1章 探偵

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 ずっと、ずっとずっと想い続けて来た人。  出会ったと時は、スーツをピシッと着た警察官だったけど、今はあの面影は何処にもない。  ただ、ミントの匂いだけは一緒だった。  あの時と同じガムの匂いが、漢助からする。 「一人にしてごめんな……」  そして、低くて優しい声音は、眠る十汰の心にも届く。  その声に、十汰の夢はいつも明るい物と変換され、好きな人の側にいれるって、こんなにも幸せな物なのかと思わせられる。それほど、漢助の存在は十汰にとって絶大だった。 「トオタ大丈夫だった?」 「いや、魘されてた……」 「そうか……。まだ、あのトラウマが抜けないか……」 「あぁ……。あの時と同じ条件になると、突発的に発作が起きる……」  漢助が誰かと話している。たぶん、下の階の弁護士、幸村(ゆきむら)(まこと)だろう。  十汰を〝トオタ〟と呼ぶのは誠しかいない。 「ん……」  十汰は誠の声を聞き、ゆっくりと目を開けた。そして、大きな両目をゴシゴシっと手の甲で擦る。 「あっ。ごめん、起こしちゃった?」 「ううん……全然大丈夫。こんにちは……幸村先生」 「こんにちは、トオタ君。久しぶりだね。少し大きくなった?」 「フハッ。先生、いつもそれ言うけど、俺もう成長期終わったんだけど」 「そうなの? 僕の時は二十五まで伸びたけどなー」 「それ、伸びすぎだから」  そんな談笑をしていると、漢助が十汰の身体を離し、リビングへと行ってしまう。
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