第6章 執着

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 忙しくて家に近寄る事は無かったけれど、欲しいと思った物は絶対に送ってくれた。  食べ物も、ゲームも、漫画もなんでもだ。 「でもさ、ずっと家にいるのも飽きちゃってさ……でもそんな時、ふとカーテンを開けて久しぶりに外を見たら……じゅったんが家から出て来るのを見たんだ」 「え……?」 「じゅったんを見た時、この世にこんな可愛い子がいるんだって初めて知ったよ」  そう言って、隠し撮りされた五年前の十汰の写真を一枚壁から外し、ウットリとした表情で話しを続けた。 「名前は直ぐに分かった。家族構成も、父親の職業も、兄の馬鹿さ加減もね。あと、じゅったんがどんな本を読んでるか、なんの曲を聴いてるかも全て……」  信之助は十汰については何でも知っているよ。そう言っているような口ぶりで話す。  それを聞いていて、十汰は鳥肌が止まらなくなるのだった。  まさか。そう思った。 「盗聴器……?」 「ピンポーン。でも、もう一つ」 「もう一つ……?」 「盗撮」 「!」 「部屋にいて分からなかった? 部屋に飾ってた絵。ちょっとだけ穴空いてたでしょ?」  そう言われても気付かなかった。確かに、壁には大きめの絵画が飾ってあった。でもそれは、十汰の趣味ではなく、ただ、母親が勝手に飾っていた物だった。だから、一度も十汰が自ら触れる事は無かった。 「いつの間に……俺の部屋に入ったの?」 「うーん。そんなの覚えてないよ」 「あ、そう……」  十汰はもう深く考えるのはやめた。  だって、事務所にも簡単に入ってくる人間だ。変な知識が豊富にあるのだろう。
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