第6章 執着

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 警察からもそう言われた。  犯人を見付けるのは難しいでしょうって、五年間も。 「ざんねーん。五年前、俺の存在は既にじゅったんの家族は知ってたんだよねー」 「え……? 嘘……」 「本当。じゅったんの存在を知ってすぐに郵便物漁ってたのじゅったんの兄貴に見付かった事あったから」 「!」  そんなの知らなかった。なんで、兄は言ってくれなかったのだろう。そんな怪しい行動を取っていた男を何故、追求しなかったのだろうか。していたら、信之助の存在が浮かんだのに……。  十汰は兄の十郎の思惑が分からなかった。 「じゅったんの兄貴はね、じゅったんの父親にこの事を話したんだよー。で、それが俺の父親の耳に入った」  えっ? 十汰は自分の耳を疑った。  今、十汰の父親と言わなかっただろうか。まさか、父親もこの事を黙認していた。そんな、嘘だ……。 「最初はね、俺に監視役が付いてたんだよ。でもね、じゅったんの兄貴がやらかしたらしくて、それが解かれた。で、その次の日。俺はじゅったんを拉致してベタベタ触っちゃった」 「……キモい」  信之助も、兄の十郎も、父の剛も。全員がぐるだった。  だから、あんな事が起きても平然としていたのだ。  十郎の尻拭いをする為に、十汰を売った。  だから、信之助が十汰を拉致しても犯人は見付からなかった。
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