第6章 執着

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 信之助の父親は警察官。しかも、位は上らしい。だから、自分の息子がやらかしても揉み消す事ができたし、十汰の父親は自分の息子のしでかした事を揉み消す為に、信之助が十汰にした事を無かった事にした。  全て、もう完結していたのだ。  被害者の十汰だけは知らずに……。 「最悪……最悪最悪っ」 「最悪なのはこっちだよ。あの男……伊達坂のせいで俺、五年もじゅったんとバラバラだったんだ」 「え……?」 「あ、そっか。じゅったん、あいつの事なーんにも知らないんだよね? 恋人なのに……」  挑発するような言い方。  そんな信之助に手を出せないこの状況が恨めしい。 「教えて欲しい? 伊達坂漢助の事」 「いい。……あんたに漢助を語って欲しくない」 「ハハッ、強気な言葉。昔のじゅったんはそんな事言う子じゃ無かったのになー……あいつに感化されたのかな?」 「いい方向にね」  十汰はそう言って、笑った。  心の中では恐怖心で今にも吐きそうだったけれど、怖いと思っている事を知られたくはなかった。  絶対に。 「なら、知らなきゃだねー。伊達坂漢助の事……知らなくてもいい事全て……」  そう言って、信之助は不気味に笑った。そして、漢助の過去を語り出した。  その話しは、十汰の想像を超える物だった。
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