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封筒の中には二枚の写真が入っていた。
一枚は二十代くらいの黒髮ロングの綺麗な女性が一人で写った物で、もう一枚はその女性が高校生の時に撮った物のようだった。
そこには、あと二人の人物も写っていた。
一人はその女性と同じ制服を着た、セミロングのふわっとした感じの女性。もう一人は、自身の身体よりも一回り大き目の制服を着た男子高校生だ。
三人が写る背後には、大きく【入学式】と書かれたパネルが立ってあり、それを見付けた十汰は、男の子が女性達と同じ高校に進学した時に記念に撮った一枚だと感じ取った。
「なんでこの一枚こんなにボロボロなんですか?」
最初の一枚は指紋一つなさそうなほど綺麗な物だったのに、スリーショットのその写真だけはボロボロと言うよりもくしゃくしゃになっていた。
それに、血を拭った痕もある。
それはまるで、誰かが死ぬ前に握り締めていたような、そんな感じがする一枚で、十汰はその写真をすぐにテーブルに置いた。
「さぁ、僕に聞かれても分からないよ。明日、ここにその写真の保有者の女性が来る事になっているから、その人に聞いてみて」
誠はそう言うと、漢助をチラッと見ていた。でも、漢助は不機嫌な為、一度も誠を見ようとはしなかった。そんな漢助を見て誠はクスクスッと笑い、十汰に視線を移し「頑張って」と言ってくれた。
そして、誠はヒラヒラッと軽く十汰に手を振ると、自身の事務所へと戻って行ったのだった。
「ねぇ! 依頼だってよ!」
十汰は依頼が来た事に興奮した面持ちを見せる。そんな十汰とは対照的に、漢助は不機嫌顔のままだった。余程、十汰に仕事を手伝わせたくないらしい。
でも、そんな顔をしたって聞いてしまったのだから仕方ない。誠に感謝しながら、漢助の助手を遂行しようじゃないか。
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