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第7章 過去
信之助は椅子に座り、足を組んだ。そして、ノートパソコンを開いて中にあるデータを見ながら話しだす。
「伊達坂漢助。元刑事。へー、国立大卒のキャリア組。で、祖父から父親、兄までもが警察官。警察官のサラブレッドってやつだねー」
そう言って、信之助はクスクスと笑う。
「でもね、伊達坂漢助は警察官になりたくてなったわけじゃないんだよ。知ってた?」
「え……?」
「高校の時、ある人物が死んだんだ……誰だと思う?」
そう問われ、十汰は心音を煩くさせる。一体誰の事を言っているのだろうか……聞くのが怖い。
「だ…誰……?」
十汰は小さくそう聞いた。すると、信之助は一枚の写真を懐から取り出し、十汰の前に捨てた。
その写真は、その人物を切り取ったように一人で写っている物だった。
卒業アルバム。そう見える。
「この人って……」
眼鏡を掛けた優しそうな青年。
十汰はこの青年に見覚えは全くなかった。
「伊達坂漢助の兄貴の同級生で、伊達坂漢助の初恋の人」
「な……」
「なんで知ってるかって? そんなの調べれば分かるよ……。ほら、この写真見て。この男と伊達坂漢助が二人で写った写真」
そう言って、また一枚の写真を十汰の目の前に捨てる。
そこにはまだ幼さの残る漢助と、ブレザーを着たその青年が二人で写っていた。
それは不意に撮られた物らしく、漢助が自分の横にいる青年を横目で見詰める視線が鮮明に分かる一枚だった。
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