第7章 過去

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 その漢助の視線。それは、誰が見ても恋をしているようにしか見えない。  見惚れている。そう言えば伝わりやすいかもしれない。 「こんな美人な男が側にいたら、確かに男に走っちゃうよねー。俺がじゅったんに惹かれたように」  信之助はそう言うとクスクスッと笑う。そして、ニコッと笑いながらまた話しを続けた。 「この青年。名前なんだと思う?」 「え……?」 「誰かに似てない?」  そう言われ、ふと頭にある人物が浮かんだ。でも、それが正解とは自信を持って言えない。でも、見れば見るほど似てる気がする。 「幸村誠」 「!」 「そう、思わなかった?」  その言葉に、十汰はやっぱりそうなのかと、信之助を見詰めた。 「……じゃあ、この人って……」 「幸村(ゆきむら)誠一(せいいち)。幸村誠法律事務所の兄貴だよ」  信之助はそう言うと、また漢助の話しに戻った。ここからが重要。そう、言葉を添えて。 「この人の死をきっかけに、伊達坂漢助はなりたくなかった警察官に進んだ。たぶん、大切な人の死を無駄にはしたくなかったんじゃないかな」 「え……?」 「助けを求めている人の声をちゃんと聞きたくて警察官になった。周りにはそう言ってたみたい」  だって……。そう信之助は言って間を置いた。そして、お腹を抱えて笑いだす。 「この人、俺みたいな執着が強ーい男に目を付けられて、ストーカーされ続けてたんだよ。でも、その当時は男が男にストーカーなんて事例がなくて、警察は真に受けなかった。その結果、その男は長信のように行動を起こし、幸村誠一は伊達坂漢助の目の前で刺されて死んだ」 「!」 「あの時警察がちゃんと話しを聞いてたら。真に受けてたら……そんな事件は起きなかった。でもね、それ、世間には知られてないんだよ」 「……どうして?」 「隠蔽」 「隠蔽……?」 「その男はさ、政府のお偉いさんの息子だったわけだよ。だから、その場で逮捕されても即釈放だったんだ……」 「え……?」 「上の人間が政府のその人と仲が良くてね、俺の時みたいに簡単に解放してくれた」  その話しに、ゾワッと音が出てもおかしくないほどに鳥肌が立った。
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