第7章 過去

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 あと少しで十汰を自分の物にできたのに、公衆トイレなんかに連れて行った自分が馬鹿だったのかな。そう言って、信之助はゲラゲラと笑った。 「だってさ、我慢できなかったんだ。ようやく、じゅったんに触れる。そう思ったら、ここ(家)じゃなくて近くのトイレなんかに拉致してた。あー、しくじった……」  その言葉に、十汰はここが信之助の家だと気付いた。確かに、大き目の窓から見える(けやき)には少しだけ見覚えがある。  それは、実家から見える物と同じだった。 「あの時あの男が来なければ……じゅったんとずっと一緒にいれたのにさー。しかもだよ、あの男あの後俺の所に来て、警察に出頭しろとか言い出すの。ハァ? って思ったよ。でもあいつは、俺の親父が誰か知ってる? そう聞いたらさ、あいつはハッキリとそんなの関係ないとか言い出した」  信之助は漢助に、自分じゃないと頑なに言い張ったと言った。なのに、漢助は信之助の言った言葉を信じず、自分よりも遥かに上の上司の存在にも屈せず、自分の信念を貫こうとしていた。 「でもね、やっぱり組織には敵わない。ぜーんぶ、俺の親父が揉み消した。だから、伊達坂漢助の証言は認められなかった。まぁ、顔は面で隠れてたから証拠なんて無かったもんねー」  でも、漢助は十汰の為に一人で動いてくれていたそうだ。  何度も信之助の所に来ては、警察に出頭しろと交渉して来た。信之助は何度も違うと笑ったが、漢助だけは信じなかった。 「その結果。俺は親父に無理矢理海外に渡れって言われた……伊達坂漢助は勘が鋭くて厄介な人物だからって……」  そう言って、チッと舌打ちをした信之助。そして、自分の右手の親指の爪を噛み出す。
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