第7章 過去

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 信之助は、なんで海外になんて行かなければならなかったのか。それがずっと理不尽だと思っていたそうだ。  でも、漢助の能力。そして、漢助の父親と兄の存在が信之助の父親には脅威的だったと後で分かったそうだ。 「俺の親父とあいつの父親って同期だったんだってさ。その息子が二人とも優秀で、出来損ないの俺がここ(日本)にいるのが恥ずかしいって思えて来たみたい。ハハッ、笑っちゃうよ」  信之助は盛大に笑い、最後にハーッと息を吐くとフフッと笑った。 「長男はズバ抜けて頭が良くて、次男は行動力や勘が鋭く射撃の腕は超一流……本当、警察官のサラブレッド……憎たらしい」  自分もそうなのに、そう呟く信之助。 「だから、俺は顔を変えて海外に渡った。で、こっちに戻って来て警察官になった。でも……じゅったんの事は忘れられなかった……」 「っ……」 「居場所を探したけど最初は分からなかったよ……まさか、あいつと一緒にいたなんてね。想像もしてなかった……苦戦した」  けれど、ようやく見付けた。その時、どれだけ嬉しかったか。そう信之助は言って立ち上がる。 「俺には人を操れるほどの知能がある。それを活かせば次こそはじゅったんと一緒にいられる……そう思って信じてたよ」 「……馬鹿馬鹿しい」 「馬鹿馬鹿しい? でも、実際にじゅったんは今、ここにいるじゃないか。ここで、俺の部屋にいるじゃないか。それは、俺があいつに勝った印だよ」 「そんなの違う!」 「違う? いや、違わない。俺の知能に従い、長信が雪音をストーキングして事故を起こさせた。その時点で俺の描いたストーリーは完成してた」 「っ……」  この男、いかれてる。
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