第7章 過去

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 それに、漢助が絢に何も告げず警察官を辞めたのは、絢には同じ様になって欲しくなかったからだ。  頑張ってる姿に惚れたから、自分の感情で一緒に辞めさせたくは無かったのだ。  だって、もし漢助が警察官の隠蔽や組織的な事に関して嫌気が差し辞めると言ったら、絢は確実に困惑し、漢助の後を追って警察官を辞めただろう。  それくらい、二人は強く結ばれていた。 「なんで……漢助……」  そんなに大事な人だったのに、何故漢助は大切な人と別れ、こんな赤の他人を引き取ったのだろう。 「罪滅ぼしなんじゃない?」 「え……?」 「幸村誠一の」 「!」 「じゅったんは守れた。でも、あの人を守れなかった。その罪滅ぼしとして、じゅったんを側に置いとく事で、伊達坂漢助の心は満たされてたんだよ……」 「違う……っ」 「違う? なら、じゅったんは何であいつの側にいるの? 何に役に立ってるの? 恋人になれたのだって、じゅったんがアタックし続けたからじゃないの?」 「そ……れは……」 「伊達坂漢助から言うなんて絶対にありえない。だって、伊達坂漢助は、幸村誠一と白石絢を愛してる。じゅったんは、その二人の代わりだよ」  躊躇いも優しさも気遣いも無い言葉。信之助は何処までも十汰の心を傷付ける。  信じたく無い。そんなわけない。  そう思うのに何故か、そうなのかもと思えてしまう十汰。  だって、漢助が十汰の身体を本気で欲して来た事なんて今まで一度もない。  キス止まりな関係。あと、触りっこ。  大人の恋人同士では考えられない幼いスキンシップが、漢助の心を物語っているように思えてしまう。  しつこい程のアタックと根気で、漢助の心を動かせたと思ったのに、それは十汰だけの自己満だったようだ。
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