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漢助は同情で恋人になってくれたのかもしれない……。
「伊達坂漢助にとって、君は本当に側にいて相応しいの?」
「え……?」
「そろそろ、あいつの心を解放してやったら?」
「そ…れは……」
そうなのかな。そうした方が良いのかな? 十汰は信之助の巧みな言葉に捕まった。
漢助の過去を知り、自分の存在がどれだけ迷惑だったのかを知ってしまった。
どうしたら良いのか分からない。
「ねぇ、じゅったんと白石絢が危険な目に遭っていたら……伊達坂漢助はどっちを選ぶかな?」
「え……?」
「知りたいと思わない?」
そう言って、信之助は胸ポケットから十汰のスマホを取り出し、ヒラヒラッと左右に動かした。
「それ、俺のスマホ!」
「あったりー。かけてみるね」
「やめっ、やめてよ!」
そう、十汰が止めるのに、信之助は電源を入れて漢助に電話をかけ始めた。そして、数秒後、漢助が電話に出る。
『十汰? お前、今何処にいるんだ?』
スピーカーにされたスマホからは、漢助の声が篭りながらちゃんと聞こえた。
「漢助……」
その声を聞いただけでホッとしてしまう。早く会いたいと願ってしまう。
「はーい。こんにちは、伊達坂漢助さん」
『お前! ……水沼信之助だな』
「せいかーい! 流石だねー。俺の事もう知ってたんだ」
信之助は漢助が自分の存在を知っていた事に少しだけ驚いていた。でも、余裕な表情は変わらない。
『お前の事は前々からチェックしてたんだよ。まさか、五年前みたいに十汰を拉致してたなんてな……』
「まぁね。俺、じゅったん愛してるから。五年前はさ、若過ぎて我慢できなくて近くの公衆トイレまでだったけど、今回はちゃーんと連れて来たい所に連れて来れた……」
『お前……十汰に何かしてないだろうな』
「してないよ。まだね」
『ふざけんなよっ! 十汰に何かしたら許さねーぞッ!』
スピーカー越しから聞こえる漢助の怒鳴り声。
その声音に、十汰は嬉しさのあまり涙が溢れた。
(漢助が俺をどう思ってても良い……俺は漢助が好きだ……)
ずっとずっと、変わらない気持ち。
漢助にどう思われてても良いと思えるほど、十汰は漢助を愛してしまっていた。
好きで、好きで好きでどうしようもない。
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