第7章 過去

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 漢助は同情で恋人になってくれたのかもしれない……。 「伊達坂漢助にとって、君は本当に側にいて相応しいの?」 「え……?」 「そろそろ、あいつの心を解放してやったら?」 「そ…れは……」  そうなのかな。そうした方が良いのかな? 十汰は信之助の巧みな言葉に捕まった。  漢助の過去を知り、自分の存在がどれだけ迷惑だったのかを知ってしまった。  どうしたら良いのか分からない。 「ねぇ、じゅったんと白石絢が危険な目に遭っていたら……伊達坂漢助はどっちを選ぶかな?」 「え……?」 「知りたいと思わない?」  そう言って、信之助は胸ポケットから十汰のスマホを取り出し、ヒラヒラッと左右に動かした。 「それ、俺のスマホ!」 「あったりー。かけてみるね」 「やめっ、やめてよ!」  そう、十汰が止めるのに、信之助は電源を入れて漢助に電話をかけ始めた。そして、数秒後、漢助が電話に出る。 『十汰? お前、今何処にいるんだ?』  スピーカーにされたスマホからは、漢助の声が篭りながらちゃんと聞こえた。 「漢助……」  その声を聞いただけでホッとしてしまう。早く会いたいと願ってしまう。 「はーい。こんにちは、伊達坂漢助さん」 『お前! ……水沼信之助だな』 「せいかーい! 流石だねー。俺の事もう知ってたんだ」  信之助は漢助が自分の存在を知っていた事に少しだけ驚いていた。でも、余裕な表情は変わらない。 『お前の事は前々からチェックしてたんだよ。まさか、五年前みたいに十汰を拉致してたなんてな……』 「まぁね。俺、じゅったん愛してるから。五年前はさ、若過ぎて我慢できなくて近くの公衆トイレまでだったけど、今回はちゃーんと連れて来たい所に連れて来れた……」 『お前……十汰に何かしてないだろうな』 「してないよ。まだね」 『ふざけんなよっ! 十汰に何かしたら許さねーぞッ!』  スピーカー越しから聞こえる漢助の怒鳴り声。  その声音に、十汰は嬉しさのあまり涙が溢れた。 (漢助が俺をどう思ってても良い……俺は漢助が好きだ……)  ずっとずっと、変わらない気持ち。  漢助にどう思われてても良いと思えるほど、十汰は漢助を愛してしまっていた。  好きで、好きで好きでどうしようもない。
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