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信之助が何を言っても、漢助の心が十汰に無くても、十汰は漢助を愛してる。信じてる。
「でもねー。これ見たら、あんたは心が揺れるよ」
『ハァ? 何言って……』
「今送ったの見てみ、あんたの愛してる人がピンチだよ」
そう言って、ヘラヘラと笑う信之助。たぶん、漢助のスマホに絢の拘束されている姿を送ったのだろう。それを見た漢助は、何も言葉を発せられずにいた。
「俺が一人でこんな事すると思った? ちゃんとここまでのシナリオは考えてたよ。長信も仕事ができる男だって事は分かってたからさ」
信之助は次にジーンズのポケットから小型の何かを取り出した。
それをよく見ると、ボタンが付いている。まさか、そう思った。
「やめっ!」
「だめー。遅いよ」
信之助は楽しそうにそのボタンを押した。すると、画面に突然タイマーが映し出され、表示された一時間からだんだんと時間が減って行くのだった。
「あと一時間で白石絢は拉致した長信と共に死ぬよ」
『どういう事だ!』
「証拠隠滅。全て長信に背負って貰う」
『そんな事はさせねーぞ!』
「させない? 無理無理。爆弾は止まってくれませーん。俺は作れるけど止め方は分かんないもん」
信之助はそう言うと、十汰の顔を見る。そして、ニヤッと笑う。
「ねぇ、じゅったん俺に頂戴よ。そうしたら、白石絢の居場所教えてあげる」
『ハァ? ふざけんなよっ! そんな事させるわけねーだろ!』
「じゃぁ、白石絢は死んでもいいのかー。可愛そー。白石先輩、あんたの事ずっと愛してたのに……」
『っ……』
その言葉に、漢助の戸惑いが見なくても分かった。漢助自身、絢の気持ちがまだ分かっている。
だって、この間、絢はちゃんと漢助に伝えていた。自分の気持ちを……。
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