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聞いてはいけないと思ったけど、聞いてしまった絢の恋心。
「この間、言ってたの聞いてるよー。白石先輩の女心…….一生のパートナーって話し」
それは、この間漢助と絢が二人きりになって話しをしていた時の会話の一つだった。
それを信之助が知っているとなると、前に部屋に侵入した時に盗聴器でも設置していたのかもしれない。
なんて卑劣な男だ。
「あんたそれ言われて戸惑ってたよなー。まぁ、仕方ないか幸村誠一と同じくらい白石先輩の事も愛してたもんね」
『お前、誠一の事も調べたのか……』
「当たり前じゃん。大っ嫌いな人間を調べるのも成功の一つだよ。ほんと、吐き気出たけど」
『絢は関係ないだろ』
「ないね。でも、あんたには関係ある。ほら、どうするの? じゅったん俺にくれるって言ってよ」
信之助はケラケラと笑い、漢助にそう言っている。そんな信之助に憤りしか覚えない。
でも、ここをなんとかできるのは自分しかいないと、十汰にはそう思えた。
だって、信之助が欲しいのはこの自分。
それが手に入れば、信之助は絢には興味を無くすだろうと思えたのだ。
「ねぇ、信之助」
「なーに? じゅったん」
「俺が信之助を選んだら、白石さんの居場所漢助に教えてくれる?」
「えっ! 本当!」
『おいっ! なに馬鹿な事を言い出すんだ!』
「馬鹿な事じゃないよ。今思い付いた解決策。俺だって、漢助の役に立ちたい」
『役にって、なにを言って……』
「俺のせいで雪音さん死んじゃったんだよっ! なのに、白石さんもなんて……俺は耐えられない!」
『十汰……』
「俺は漢助の恋人になれなくても、相棒として側にいたいっ。ずっとずっと、側にいたいの!」
そう言って、十汰は信之助を見詰める。
そして、言い切る。
「絶対に抵抗しない。逃げたりしたい。何処までも側にいる。だから、白石さんの居場所漢助に教えて」
「本当? 俺にキスされたり抱かれたりされてもいいの?」
「いいよ。何されても俺は信之助を拒まない」
『十汰ッ! そんな事言うなッ! おいっ、じゅ……』
信之助はもう用済みとでも言うように、漢助との会話を切った。
そして、スマホを弄って漢助に絢の居場所が載った地図を送信した。
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