第7章 過去

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 その確認を信之助は律儀に十汰にしてくれ、それを見た十汰はホッと安堵した。 「じゅったんって結構男らしいね」  そう言って、信之助はニタッと笑う。そして、信之助は立ち上がり、水の入ったペットボトルに口付ける。 「さぁ、楽しもうか」  信之助はそう言って唇に付着した水を手の甲で拭い、ゆっくりと十汰の方に近付いてきた。  その目は早く十汰を抱きたいと言っていて、十汰はその目を見てゾッと鳥肌を立たせたのだった。  でも、ここで抵抗をして信之助の機嫌を損ねさせるわけにはいかない。  もし、爆弾以外にも用意している物があったら、助けに行っても意味が無くなる。  少しでも時間を稼がなければ……そう思った。 「ね、ねぇ。抱くってここで? ここ、ベッド無いけど」 「うん。ここで抱くよ。俺、ベッドでとかちゃんとしたのって興奮しないから」 「あ、そうなの……」  なんてこった。まさか、こんな所で抱こうとしてるなんて。  時間が稼げない。 「痛いのと優しいの、どっちが良い?」  信之助は十汰の前で屈み、十汰の白い頬をそっと撫でる。でも、その時。信之助が突然十汰の髪の毛を見始めた。その目は冷たい。 「前のじゅったんはこんなに髪の毛長くなかった……綺麗なうなじが見えない」  そう言って、突然小型のナイフを取り出した信之助。まさか、そんな物を持っていたとは思わなくて、十汰は息を飲んだ。 「あー。これじゃ、じゅったんの可愛いお顔に傷が付いちゃうかもね。それは嫌だなー」  信之助はそう言うと立ち上がり、離れた場所にあった棚からハサミを取り出した。 「じっとしててね……」  近付いて来る信之助とハサミ。  その二つに怯えながら、十汰は目を瞑り、時が過ぎるのを待った。
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