第8章 嫌悪

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第8章 嫌悪

 ショキッショキッと耳元で音がする。こんな音を聞くのは美容院でくらいだ。  暫く髪なんて切っていなかった十汰は、その音に身体が強張った。 「おー。これこそ、じゅったんだ。可愛いー」  信之助は自分の腕に惚れ惚れしたように、声を高くしながらそう言った。  その声を聞いて、十汰はそっと目を開ける。 「見て、俺上手くない!」  そう言いながら、信之助は大きな鏡を十汰に見せる。それを見て、十汰は自分の姿にげんなりした。 「う、上手いけど……俺幼くなった気がする」  童顔なのが髪を短くした事により、更に幼くなってしまった。  そこに映ったのは紛れもなく中学生の頃の自分で、これを信之助が望んでいたのかと思うと、ショタコンかよと言いたくなる。 「この時のじゅったんをずっと抱きたかったんだよね。ほら、ここ……」 「っ……」 「綺麗なうなじ。ずっとここを噛みたかったんだ……」 「ウアッ!」  突然、信之助の顔が近付き、ガブッと左のうなじを噛んできた。  その痛さに、十汰は顔を顰める。 「さて、始めようか……」 「うっ……かはっ……」  信之助はそう言って、十汰の頭を掴むと、グイッと上に向かせ、強引に口を開けさせた。そして、一つのカプセルを十汰の口に入れると、水を流し込んで来た。  その苦しさに、十汰はそのカプセルをごくっと飲んでしまう。 「な…なに……っ」 「だいじょーぶ。気持ちよくなるだけの薬だから……」 「はぁ…意味わかんな……っ…んっ!? ハァ…ん…ハァ……っ?」  突然、身体が熱くなり始めた。  息さえも上がる。それに、下半身も熱い。  まさか、こんなに早く効く薬があるなんて。十汰は信之助のする事全てに驚かされる。 「これ、海外で知り合った友人から貰ったんだ。違法なんだけど即効性があって、誰もが積極的に腰を振る」 「っ……ハァ…そんな事……するわけな……」  保てる理性はまだある。でも、時間が経ったらどうなるか、それは自分でも分からない。  そう思うほど、薬が身体中を巡っていく。
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