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熱く朦朧とする頭で十汰は目を凝らし、中にゆっくりと入ってきた男や見詰めた。
やっぱり、漢助だった。---漢助が来てくれた。
「な…なんで……」
それを見て、十汰に覆い被さっていた信之助が舌打ちをしたのが耳元で聞こえた。
「なんであんたがここにいるんだ? し……白石絢を見捨てたのか?」
信之助はさっきとはまるで違い、焦りを見せているのが見ていて分かった。
漢助を見て、恐怖心が込み上げていた。
「はっ。白石はもう解放されたよ……とっくの前にな」
「えっ! な、わけない! あそこは俺のパパが個人的に所有する別荘だ。県だって挟んで……」
「そうだな。普通なら辿り着かない……普通ならな」
「なっ……」
どういう事? 十汰は心の中でそう漢助に聞いた。そんな十汰の気持ちに気付いてか、漢助が語り始める。
「お前の行動は、全て俺の引いた線に向かって歩いていたような物。ここがゴールだ」
「な、なにを言って……んがっ!」
漢助はスッと俊敏に動くと、いつの間にか信之助の横に行き、上から叩き付けるように拳を大きく振り上げ、頭を殴った。
その衝撃に、信之助が吹っ飛んで行く。
「か……すけ……」
頭を抑え、蹲る信之助を余所に、漢助が十汰のあられもない姿を見て眉根を寄せ、自身の着ていたシャツを脱いで十汰の身体を隠すように掛けてくれた。
ふわっと香る漢助の匂い。その匂いに身体がぶるっと震えた。---抱かれたい。そう思ってしまったのだ。
「遅くなったな。……大丈夫か?」
「……う…ん」
十汰は熱くなる身体をギュッと強く痛いくらいに抱き、頷いた。
本当はそんな風に答える余裕などない。
漢助を組み敷き、何度も見たそれを中にぶち込み、奥まで飲み込みたい。
でも、そんな事言えない。今は言いたくない。
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