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薬を飲まされたからその解放として抱かれるなんて嫌だ。
十汰を欲しいと漢助から求めてくるまではしたくはない。そう、十汰は思ったのだ。
「お前は俺の思った通りに行動してくれた。感謝してるよ……」
そう言って、漢助は信之助を見詰め笑った。
その笑みは不気味で、犯罪者のような目付きだった。それくらい、鋭い眼光だった。
「な…なに……っ」
「お前が家に盗聴器を仕掛けてくれたお陰で、他織を縄に繋げたからな」
「なっ! 嘘だ! 長信は捕まってない! あいつはちゃんとこうして白石絢を拘束……」
そう言って、信之助はパソコンの画面を見て一瞬動きを止める。何かがおかしい。そう、思ったようだ。
「それ、録画」
「なっ……」
「白石は既にもう他織と共に警察署の中だ」
「なにっ!」
「それに、今までの会話、お前の親父も聞いてるって気付いてた?」
「!」
「十汰のスマホ、改造してあんだよ。手先の器用な仲間がいるんでね」
「な、嘘だ……」
「本当」
漢助は不敵に笑い、ここまでの流れを話した。
「お前は十汰が一人なのを狙い、前に事務所に侵入し、盗聴器を仕掛けた。それは、その日に俺は気付いてた。そんなの、お前は全く気付いてなかったろうがな」
「!」
「それを利用し、俺は白石を事務所に呼んだ。その前に打ち合わせを済ませてだ」
「打ち合わせだと……?」
「そう。俺と寄りを戻したい、そう言った事を話し、あたかも俺の心が揺らいでいるように思わせる会話をしろってな」
「なっ、あれは……演技だったのか?」
信之助は驚きのあまり身体を支えていた右肩をカクッと落とした。でも、十汰もそれを聞き、漢助の腕の中で同じように驚く。
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