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その手は躊躇いもなく信之助を打つ姿勢を保っていた。
そんな漢助に、圧倒されて腰を抜かす信之助。
辞めてくれと何度も何度も漢助に言う。
でも、漢助は一瞬も信之助から目を逸らさない。
本気で打つ気だ。
「かん…すけ……」
「!」
十汰は漢助の腕を掴んだ。そして、駄目だとか弱い声で告げる。
漢助を犯罪者にしたくない。
さきえに告げた復讐を、漢助の手でしてほしくはない。
漢助が復讐は悲劇を生むだけだと言ったのだ。だから、そんな事絶対にさせない。
「漢助……」
「十汰……」
自分は大丈夫。もう、怖いものなんて何も無い。そう、目で訴えた。
「くそったれ……」
漢助は弱った十汰を見詰め、奥歯を噛んだ。やりきれない気持ちに漢助は葛藤しているようで、そんな漢助に十汰は笑みを向けるのだった。
そして、漢助は銃口を下に向けた。
「二人とも大丈夫かい!?」
そんな十汰と漢助の前に誠が現れた。
その後ろには竜平と絢の姿もあり、頑丈に施錠されたそれを竜平が開けてくれたようだった。
そして、外からはパトカーのサイレンの音が何台も次から次へと聞こえて来た。
「おせーよ……」
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